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Year 2022

「GaaS」型モデルへの変遷に見る 格闘ゲームユーザーのモチベーション維持

お疲れ様です。カシン(@kashin5445)です。

4gamerの記事にて、バーチャファイター1周年に際し、VFesの青木プロデューサーと、鉄拳の原田プロデューサーの対談が掲載されておりました。
対談内で、原田Pより以下のような発言がありましたので引用します。


 

原田氏:
 かつてはゲームが出てから2年も経つと,新作を考えていましたが,今は「GaaS」(Games as a Service。継続的にアップデートを続ける,運営型タイトル)の時代です。3年経っても,1年目と変わらないペースで売れてくれます。
 1年目で開発費をリクープし,2年目以降はちょっとした維持費がかかるだけできちんと利益を生んでくれるわけです。

 

 


GaaS、聞きなれないワードですね。
そこで、本記事では
 ・GaaSについての解説
 ・GaaSモデルを維持するにはユーザー数を維持する必要がある
 ・それにはユーザーのモチベーション維持が大事

ということをゲーマー視点で勝手にまとめました。
よろしければ最後までお読みください。
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■GaaS(Games as a Service)とは

・従来型モデル
GaaSモデルの説明に入る前に、従来型のモデルについての説明をさせてください。

図の左側は、過去のバーチャファイターの家庭用発売の履歴です。
それぞれがパッケージの買い切り形式になっており、ワンショットで6,000円(金額は適当です。実際とは異なります)を支払えば、対象のゲームに対する永続的な所有権(利用権)をユーザーは得ることが出来ます。
しかし、原則として今後の大型アップデートやキャラクター追加などはなく、新作が発表されたら再度購入する必要があります。


・GaaSモデル
月額費用を形式になり、その費用には「ゲームの利用権」「バージョンアップ権」をすべて含んでいるものとなります。
逆に、途中で課金を終了してしまうと、利用権が消失することになるため、ゲームそのものを遊べなくなるというものです。

※厳密に言うと、鉄拳もバーチャも、現行はパッケージ売り切りの後で、追加コンテンツを購入させるモデルになっているため、この限りではないのですが、各社最終的に目指すべき姿は月額課金モデルであろうという想定で、便宜上このような表現としております。

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■〇aaSとは何??

IT業界に身を置く方には馴染みがあるかと思いますが、一般的には聞きなれないワードかと思います。
〇aaSとは、一言でいうと、「インターネットを通じて提供されるサービスの総称」です。

どのレイヤーまでをクラウド事業者が提供するかで呼び名が代わり、
SaaS(Software as a Service)は、ネットワーク~アプリケーションまでをオールインワンで提供。Google workspaceやM365などが代表格です。
PaaS(Platform as a Service)は、ネットワーク~ミドルウェアまで、IaaS(Infrastructure as a Service)はネットワーク~ハードウェアを提供し、アプリは自社で開発するけど、インフラ部分は用意してもらいたいという時に用います。AzureやAmazon web Serviceなどが代表格です。

今回のGaaSについても、インターネットを通じて提供されるゲームサービス、ということでaaSシリーズの仲間、という話でした。

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■ビジネス視点での従来型、GaaS比較

・従来型(買い切り)
売れれば売れるほど利益が増えますが、ワンショットで大きな開発費が発生し、大きな売り上げが発生する、メーカーとしてもリスクリターンの大きい手法でした。


・GaaSモデル
左から右に一直線に伸びている黄色のグラフが売上です。月額で費用を支払っているため、右肩上がりで総売上は伸びていきます。
一方、グレーの線が経費(運営費+開発費)になります。途中凸凹しているのは、バージョンアップやキャラ追加等に伴う開発費が発生している想定になります。
ここで分かることは、GaaSモデルにおいては運営する期間が長くなれば長くなるほど、利益が拡大して行くというものになります。

従来は売り切って、さあ次だと巨額の開発費用を掛けて次のタイトルを投入する方式でしたが、GaaSモデルでは、1タイトルを大事に育てて行くことで、継続的に利益を得られるというのがこれまでとの違いとなります。

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■GaaSモデルを継続するには

ここまで読んで頂いて、勘の良い方であればお気づきかと思いますが、

GaaSモデルにおいて継続して売上をあげる=ユーザー数を維持する必要がある

ことを示しています。
 

・[グラフ左]ユーザー数が減って行ってる状況
 →売上が鈍化しますが、掛かる費用(運営費+開発費)は変わらないため、結果においてメーカーの利益も鈍化します

 

・[グラフ右]ユーザー数が維持されている状況
 →先の通り、運営期間が長くなるほどに利益も増加しています

つまり、格ゲーにおいて課金を継続してもらうには、イコール、対戦を長く続けてもらう必要がある、ひいてはユーザーのモチベーション維持・向上が重要であると考えます。

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■モチベーションに関する話題
栗田親方のVFes配信内で、モチベーションに関する話題がありました。
詳しくは動画をご参照ください(32:40頃~)

 

会話抜粋
「格げーの挫折要素が増えたのは、村勇者が存在しなくなってしまった」
「仲間内数人の中で勝ったという喜びを味わえなくなった」
「今までは各井戸で強くなり、そこでは物足りなくなって、リアル俺よりも強い相手に会いに行くと言って街へ出る流れだった」
「全体における自分の立ち位置(ランキング)が可視化されてしまう」

これに対しては視聴者の皆様からも反応あり、以下のようなコメントがありました。
「いきなり大海に投げ出される」
「今は所属がゲーセンじゃなくて各チャンネル」

総じて、
コミュニティ(ゲーセン→オンライン)の変化に伴い、成功体験が得られにくくなった
ことが語られました。

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■コミュニティの変化による影響

・従来型(ゲーセン主体)
私は古い人間ですので、格ゲーはゲームセンターでデビューしました。
そのデビューは、地元(地域)のゲーセンでした。ゲーセンには様々な人がいました。
あまり強くはないが、毎日ゲーセンにいて、常連と楽しそうにゲームをする人、かなり強いが、あまり顔を出さない人。きっと主戦場は別にあるのかな?
などなど、とりあえずゲーセンに行けば相手を選んで(=自分のレベルに見合った)対戦出来るし、時には強い人に挑戦!という形で、その日の気分に合わせて対戦出来ました。

また、どうしても狭い空間ですので、そのうちゲーセン内での交流も自然と産まれます。
私は生粋の人見知りですが、VF2時代はゲーセンでひたすら影の肘>PK>6Kコンボだけを連打しているうちに、「強いね~ちょっと俺のバーチャ見てよ」「ふざけんな(直後に灰皿が飛んでくる)」など、色々なコミュニケーションが起きることで、知り合いも増えて行きました。


地域のゲーセンで物足りないと感じれば、強豪が集まる県内のゲーセンに行き、最終的には全国有数の猛者が集まる都内のゲーセンに行くなど、ゲーセンによるピラミッド型が構築されており、ステップアップして行く手段を取ることが出来て、とても刺激的な日々でした。

ひとつひとつレベルアップが出来て行く感覚も心地よかったですが、自分より強い人が少しずつ見える感覚も、またよかったと思います。
あくまでその時見えるのは、そのゲーセン内でのNo1であって、まずはここを目指そうという明確な目標が産まれます。
別のゲーセンに行けば、そのゲーセンのNo1が初めて姿をあらわします。
RPGと一緒ですよね。徐々にレベルアップをして行く過程で、はじめて自分より強い相手に出会う、
リアル「俺より強い奴に会いに行く」です。


・現在(オンライン)
突然、オンラインという大海原へ放り出されます。

誰とでも対戦出来る・誰とでも繋がることが出来ることは大変魅力ですが、裏を返せば、「全世界の中で自分のランキングが可視化」されてしまい、ドラゴンボール第一話で悟空がフリーザの存在を知ってしまったという絶望的な状況です。
ゲーセンにおけるNo1のような小さな目標も建てられず、広大な海の果てに存在しているフリーザへたどり着く目標を建てることはとても困難なことです。

同様に、誰とでも繋がれることは、イコール誰と繋がって良いかが分からないことも示しています。
つまり、オンラインにおいては「自分から前に出られる」人でないと、成功体験を得られにくい・モチベーションを維持しにくいのではと考えられます。

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■ではどうしたらいいのか
・コミュニケーション

繰り返しとなりますが、ゲーセンに行けば自然とコミュニケーションが取れた時代ではありません。
迷える初心者プレイヤーのために極限までハードルを下げたコミュニティをユーザー・メーカーが用意してあげる必要があります。
(SNS、ミニ大会、イベント等々・・・)

[宣伝]
 栗田親方、闇よだれさんが毎週木曜にT-DAYトーナメントという段位別の大会を開催されています。
 本当にどなたでも参加出来ますので、デビューしたての方でも安心して参加出来ますよ!(私もたまにお邪魔しています)
 https://www.youtube.com/channel/UCcfGIBBCVmpBhhTXGA3aH6w/featured



・上達の支援

これは個人的にあったら良いな、の仕組みになりますが、一人で対戦していても、ある程度のレベルに達成しないと、今の試合の何が良かったのか、何が悪かったのかが分からないんですよね。
せいぜい練習してたコンボが出来たか出来なかったか程度でしか自分の試合を振り返ることって出来ないかと思ってます。

そこで、自分のトレモでの練習結果や、オンラインでの試合内容をメーカー公認のプロゲーマーに見てもらい、良い所改善すべき所のコメントをもらう。もらったアドバイスを次の試合では意識することが出来ますし、何より自分から見たら雲の上のプレイヤーからコメントをもらうことが出来るのは、モチベーションに繋がると思っています。
有料コンテンツにしてでも是非実装して欲しいな、と思います。

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■まとめ

以下の通りとなります。

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今後、格ゲーの主戦場がゲームセンター(オフライン)に完全に戻ることはないでしょう。
ゲーセン育ちの自分としては悲しい限りですが、オフラインが縮小している事実を受け入れ、オンラインを前提とした取り組みを検討する必要があります。
※ミカド、ニュートンやメーカー公式でオフラインイベントを開催頂いており大変ありがたく、決してオフラインを否定しているわけではないことをご容赦ください。あくまで世間の流れやメーカー目線でまずオンラインを軸に考えざるを得ない、、という話です。

 

私はイチ格ゲーファンとして、格ゲーの魅力は人対人であると断言出来ます。
ゲームを通じて仲間が出来ること、共に強くなって行くステップの楽しさが一人でも多くの方に伝わればと思っております。

本日、記した実行例は一例に過ぎません。そして、メーカーの動きに対してただ批判したり、
状況を悲観するだけであれば誰にでも出来ます。
新作を期待する。業界の更なる盛り上がりを期待する。オンラインでの盛り上がりを期待して行く、派生してオフラインでのイベント開催を期待する、そして何より自分のプレーしている格ゲーコンテンツが1日も長く続くことを望むのであれば、ユーザーコミュニティ、メーカーが共に手を取り合って、アクティブユーザーを増やす・維持するための努力を続けること必要があるのではないでしょうか。

 

長くなりましたが以上となります。
 

なお、本ブログに記した内容は、動画化もしております。
20分弱と長いですが、是非こちらも併せてご確認頂けると嬉しいです。


(Youtube)「GaaS」型モデルへの変遷に見る 格闘ゲームユーザーのモチベーション維持

 

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2022/09/05   カシン