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セガとMicrosoftの戦略的提携に関する考察(前編)

※今回はバーチャファイターの話はほぼありません。

2021/11/1付でセガおよびMicrosoftより以下のプレスリリースが発表された。
https://www.sega.co.jp/release/211101_1.html
https://news.microsoft.com/ja-jp/2021/11/01/211101-expanding-microsoft-azure-in-the-gaming-industry/

「セガの中長期重点戦略においてSuper Gameと掲げている大型グローバルタイトルの創出に向け、クラウドプラットフォームMicrosoft Azureにおいてマイクロソフトの様々な技術を活用してタイトル開発を進めていくこと、ならびにマイクロソフトが保有するソリューションを活用しセガの次世代開発環境の構築を進めていくこと、を主軸とする戦略的提携の検討を進めていくことに合意いたしました」

幾つかのキーワードがあるので、順番に紐解いて行きたいと思う。
Super Gameと掲げている大型グローバルタイトルの創出
先日、本ブログでもご紹介した通り、今後5年間のセガ重点施策と位置付けられている(画像は前回ブログ記事の再利用)
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続いて、
「Microsoft Azureにおいて」の文字。
ここで引っ掛かる方が多いと思うので、Azureについて解説したい。
インフラエンジニアの皆様にはお馴染みのサービスだが、ここではAzureをご存じない方向けに、ググって出てくる結果よりももう少し噛み砕いた形で説明をする。
バーチャファイターの未来を皆と語る上では大勢にAzureを理解してもらう必要がある。多分。

Azureとは一言で言うとクラウド上で提供されるサーバー・ストレージとなるが、これじゃ何のこっちゃだと思うので例を挙げて説明する。

例えば、オンラインゲームのサービスを展開することとなったとしよう。
データを処理するためのサーバーが必要になる。サーバーとは、若干語弊はあるが、長期間稼働に耐えられるパソコンみたいなものと思って頂ければいい。

このサーバーを従来は自社で全て賄う必要があったが、サーバー運営はとにかくまあ大変だ。
セキュリティパッチの適用、定期メンテナンス、故障時の対応、そして一番つらいのが、利用状況に応じた拡張対応だ。

このような経験は無いだろうか。
スマホゲームやオンラインゲームで大規模イベントや、新作アイテムやガチャがリリースされた日に意気込んでアクセスするも、非常にアクセスが重くなったり、最悪接続出来ないという状況になったことを。

これは、サーバーの処理性能に対して、ユーザーからの処理要求(アクセス数など)が上回り、キャパシティを越えてしまったことを示している。個人のPCも、沢山アプリケーションを並列して開いたり、動画を複数再生したりすると操作が重くなると思うが、同じ事象だ。
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サーバーの処理性能が追い付かなくなった場合に出来ることは、超ざっくりと言って3つ。
①ユーザーアクセスを遮断する(手っ取り速い。ユーザークレーム有)
②設定やプログラムの見直しにより処理の軽量化を図る(時間&コストが掛かる)
③サーバーを拡張する(時間&コストが掛かる。確実性あり)

通常、アクセスが殺到した時は、まずユーザーに詫びを入れつつ①でアクセスを遮断して入口を狭くする。ユーザーからクレームの電話が来ようがSNSで叩かれようがやるしかない。席数10名のラーメン屋に1000名来てしまい、全員が一斉に店に入ろうとしている状態だ。
なおこの時のシステム管理者は、「ああ、今日も徹夜か・・夜食何食べよう」など、概ねどうでもいいことを考えている(この後の障害報告書作成のことを考えてしまうと気持ちが落ち込み、手が鈍るからだ)

①での応急処置をした後に、②と③を並列して対応するということになるが、どちらも時間が掛かる。
③のサーバーに関しては、秋葉原で売ってるようなものではないので、リセラーを通してオーダーを入れても、最低到着までに1か月掛かる。そこからセットアップ、設置、チューニングを考えると早くても1か月半は掛かる。

ゲーム運営企業としては、せっかくのドル箱の素質を持ったゲームの成長を、1か月半も止めてしまうのは致命的と考えるのが普通であろう。
前置きが非常に長くなったが、これらを解決するのが、Azureとなる。

以下図の通りクラウド(=雲、インターネットの向こう側)が示すように、Microsoft社が提供する「サーバーをあなたの好きなだけ用意するよ、使った分だけお金を払ってね」サービスがAzureである。
MS-2.jpg

これにより、③の課題は解決出来る。
処理性能が足りない、となった時、操作一つでサーバーを自在に拡張することが出来るのだ。
拡張だけではなく、縮小も簡単に出来るため、アクセス数の少ない平時の際・アクセスが多くなる土日・更にアクセス数が急増するイベントの時は更に拡張・・というのも自由自在だ。
自社でサーバーを用意することは、時間とお金を掛ければ出来ることは先に申し上げた通りだが、立派にサーバーを拡張したが、それらが活用されるのが月1回のイベントの際だけでは非常に勿体ない使い方となってしまうが、Azureは基本従量課金のため、使った分だけを支払えば良い。
(そして、システム管理者も有事の際に現地にダッシュしなくてよくなる・・・!!)

更にAzureも国別にリージョン(サーバー設置先)を選ぶことが出来るため、日本向けには東京リージョン、アメリカ向けにはジョージアリージョンなど、サービス提供先に合わせたロケーションが選択可能だ。
日本とアメリカでデータを同期することも可能なため、災害対策も兼ねることが可能だ。


つまり、今回のプレスはセガのゲーム開発・サービス展開におけるベースインフラとして、Azureを全力活用します、ということを宣言しているものとなる(なお、大規模オンラインサービスでAzureが採用されている事例は多数ある)


ここまでAzureの解説をさせて頂いた。
随分長くなってしまったが、ここまでお読みいただければAzureの活用によりセガは何をどうして行きたいのか、予想出来た方も多いのではないだろうか。
長くなったので続きは次回に。明日更新・・出来るといいな・・
 

2021/11/03   カシン
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